●「続・知られざる日豪関係」(406)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「やたらと猫を可愛いがり、コンパウンドにまぎれこんできた野良猫を四、五匹も飼い、首に『ミナミ』と書いた札をさげさせていたこと等々、それらはいずれも、生きている南忠男の姿を、ほうふつとさせるものだった。
 しかし、写真を見終わった高原氏が、懐旧とも悔恨ともつかぬ口調と表情で語った話は、私の胸をとらえてはなさなかった。
『ああ、あの夜なあ。
 南君、キャンプ・オフィスから出てくると、わしらのところへ来て、愚痴こぼしとった。
【下山のやつ、えらそうなことばかりいいおって、脱走しようとしたこともないくせに】 
 とかいうとったなあ』