〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜
「かさついて張りのない老人の白い肌には、左肩から胸にかけて、ひきつるようなてらてらとした直線が、長さ四〇センチほどにわたって走っていた。
むろん、その傷を見た瞬間、私は老人のいおうとしていることがすぐにわかった。
そして老人も、私の表情からそれを読みとったらしく、胸の直線を指でなぞるように示しながら、なおも話し続けようとした。
『この町で、ジャップは・・・・・』
だが、老人がそういいかけたとき、沈黙を破り、どっと集まってきた仲間らしき人たちがかれを制し、服を着せるとパブの奥のほうへと連れ去っていった。」