●「続・知られざる日豪関係」(419)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「思えばアンザック・デーという特別の日に、その意味も考えず、この苦い過去をもつ町へやってきたのは、私の戦後派ゆえの軽率さだったのかもしれない。
 ほかの日だったならば、あの老人もあれほど興奮することはなかっただろう。
 だが、カウラという小さな田舎町と、それを有名にしてしまったカウラ事件、そして日本人としての自分を思えば、むしろそれまで、『ジャップ!』を耳にしなかったほうが、よほど不思議なことだったのかもしれない。
 翌日の朝、私は町の北にある日本人戦争墓地を訪れた。
 すでに何度も訪れてはいたが、きれいに刈り込まれた芝生の美しさ、手入れのゆき届いた垣根の見事さは、あらためて感心させられるものだった。」