●「続・知られざる日豪関係」(485)

「わたしと映画・南十字星」(35)


「オーストラリアの特攻隊」の続き


 潜入者の一行が諜者であることは解ったが、その外にも重大な目的があるらしいことが解ってきた。
 桑原高級参謀は甲會報(軍司令官、幕僚、各部部長の會議)の席上でこういう發表をした。
「今囘我が領域に潜入して来た敵軍は、その行動の状態が従来の敵軍とまったく異っていることが解る。
 あの厳重な海軍根據地を巧みに通過して昭南港に近づいた大膽な行動もおどろくべきものであるが、我が捜索隊に追いつめられた敵兵が、逮捕の寸前にいずれも拳銃、劇薬等を使用して自決することである。
 元来英米軍人は力つきた時は双手をあげて降伏するのが通例であって、自決するということは無い。
 何かよほど重大な任務を帯びていると見なければならない。 
 今、腰田少佐は、一人でも逮捕して眞相をつきとめるために、必死の討伐行をつづけている」