「わたしと映画・南十字星」(49)
「オーストラリアの特攻隊」の続き
港から一番眺望のきくところで船をとめて風待ちをすることは危険至極だった。
一行中には緊張のあまりヒステリックになる者さえあった。
萬一の頼みは、船上の日章旗と軍政監部旗のおかげで、日本軍が怪しまずに通り過ぎることだった。
そういうことは、それまでたびたびあった。
この船を發見した現地人の哨戒船は、何んの疑念を持つたわけでもない。
乗り組みが日本人と見たらただ通り過ぎたに違いない。
しかしこの場合は色の黒い裸體の現地人だつた。
現地人に對しては、同じ現地人で日本軍に使われている者は、虎の威を示したがる。