●「続・知られざる日豪関係」(519)

「わたしと映画・南十字星」(69)


「オーストラリアの特攻隊」の続き


 今までの取調べは情報のための取調べだつたが、今度は法律の下、彼らの行動を吟味する峻嚴な訊問である。
 神谷少佐が取しらべを行い、私は單なる通譯としてこれを助けた。
 取調べの結果、次ぎの三點が国際法に照らして明かな違法であるということになつた。

 第一 日本軍占領地に潜入した彼らは、陸軍の作業衣を着用しており、階級章を使用していない。
  海軍軍人までが一様にこの作業衣を着用しているからには、これは軍の規定した制服と見ることはできない。
  少数の人員でお互いに階級を知つているから階級章の必要もなかつたという辯解も當らない。
  階級章は交戦國の相手に對して示すべきものである。
  卽ち彼らは、戦時國際法に規定するところの、一定の制服を着用していないから正規の軍事行動と認められない。