●「続・知られざる日豪関係」(527)

「わたしと映画・南十字星」(77)


「オーストラリアの特攻隊」の続き


 神谷少佐は私にこのことは絶對に口外するなと口止めをした。
「君、腹と腹で行こうじやないか」
 私は無論賛成だつた。
 現地人の死刑執行は、手續上の不備を理由に延期された。
 幸い死刑の宣告は彼らの耳には達していなかつた。
 この現地人たちは、終戦の際、理由も云わずに釋放された。
 恐らくは何のために収監されたかも知らず、まして死の運命が寸前に迫つていたことも知らずに、今どこかでゴム園の苦力でもしていることであろう。
 腹で行こうと云つた神谷少佐は法務部の威信のためにも、前囘のことを公表しないことにした。
 ただ記録のために、私と二人で秘かな取調べをした。