●「続・知られざる日豪関係」(532)

「わたしと映画・南十字星」(82)


「オーストラリアの特攻隊」の続き


「故國でストーヴの前に座つて、安楽に本を讀んでいる人には私の手記は解らない。
 三カ月にわたる逃亡の後、残虐の聞え高い日本軍に捕えられ、きびしい運命を覺悟して取調官の前に出た時、新しい石鹸と新しいタオルをもらつて風呂に入れられ、新しい衣服を給せられ、そして私達と同じ鄭重な英語で、
『まあコーヒーでも飲みましよう』
 と挨拶され、思わず目頭が熱くなつた氣持が解らなければ、私がこの手記を書く氣持は解らない」
 と書き出してあつた。
 他の人たちも、その後へ短い文句を書き足してくれた。
 この文書は、私が戦犯に指名された時、私の生命を救う神様となつた。