●「続・知られざる日豪関係」(561)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”ステーキと卵”の続き


 ツラギにはそのうち四〇人から五〇人のヨーロッパ人が住んでいて、それでもイギリス人の植民生活につきものの洋風邸宅、クリケットの柱、小さなゴルフコースなどがそろっていた。
 ソロモン群島はジャングルさえも空っぽに近く、いるのは蚊、トカゲ、河の浅瀬に住むすばやいワニ、時にうさぎくらいの大きさの森ねずみが見られるくらいであった。
 一〇万人以上の現住民が原始的で隔絶された生活を営んでいた。
 大半はきわめて色の黒いメラネシア人で、入植者たちとはもちろんおたがい同士でもほとんど接触しなかった。
 約四〇の方言が使用されていたからである。
 首狩りの風習もなかったわけではなく、こわがった白人たちは奥地に入りこもうとしなかった。