●「続・知られざる日豪関係」(564)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”ステーキと卵”の続き


 こうした絶望的情勢の中で、モリンダ号が二月八日オーストラリアに向けて最後の航海に出るという噂が広まった。
 おびえた入植者たちは、財産を放棄してこの船に便乗しようと全群島からツラギへ流れ込んで来た。
 避難者たちは波止場で待っている間に、やがてくる悲運の前触れを垣間見た。
 午後一一時モリンダ号が視界に入って間もなく、日本の川西飛行艇が頭上に現れたのである。
 船が入り江に逃げ込んだとき、飛行艇は二発の爆弾を投下した。
 命中はしなかったが、それはこちらに防備力があったからではなくむしろ幸運によるもので、対抗すべき地上砲火は何もなかった。