●「続・知られざる日豪関係」(565)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”ステーキと卵”の続き


 飛行艇が去り、モリンダ号がやっと係留された直後は大さわぎとなった。
 午後いっぱい、船長が救命ボートの調達や切符のことで気をもんでいる間に、避難者たちは乗船しようと争った。
 船が別れの汽笛を鳴らしてともづなを解き、オーストラリアへ向かったのは午後八時をすぎていた。
 静寂が再びツラギに戻った。
 午後の大騒ぎのあとに残ったのは、ドックの上にまでごろごろしている、うち捨てられた荷物の山、忘れられた政庁文書の箱、乗船を逸した二、三人の不運な入植者と、そしてこともあろうに、一人の新到来客であった。