●「続・知られざる日豪関係」(567)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”ステーキと卵”の続き


 いま彼はツラギに戻り、次の任務を待っていた。
 ウィリアム・シドニー・マーチャントという初老の行政長官は、すっかりうろたえてクレメンズに北西部のギゾ島にあった地方事務所を引きつぐよう命じたが、ギゾはすでに無人になっており、彼は、そこに行くのは無意味で自殺的だと主張した。
 結局クレメンズはマーチャントを説得して、南へ二マイル離れた英領ソロモン群島最大の島、ガダルカナルへ行くことにした。
 ここで何か役に立つ仕事ができそうだったからである。
 二月一一日、彼はガダルカナル島に渡り、行政の中心地である北岸の小さな入植地アオラに地区官吏のD・C・ホートンを訪れた。