●「続・知られざる日豪関係」(568)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”ステーキと卵”の続き


 クレメンズの到着はホートンと補佐官のヘンリー・ジョスリンには神の使者とも思われた。
 二人は早く島をはなれて軍務につきたいと願っていたからである。
 彼らは急いでクレメンズに引きつぎをして、三月はじめに島を去った。
 マーティン・クレメンズはかくてガダルカナル島にいるただ一人のイギリス人官吏となったのだが、それは決してうらやまれるような地位ではなかった。
 彼は打ちくだかれた植民地世界に英国旗をかかげつづけることを期待されたばかりでなく、自身を無期限にガダルカナルにしばりつけるもう一つの任務を引き受けた。
 クレメンズは自動的に島島の沿岸監視業務の中心となったのである。