●「続・知られざる日豪関係」(570)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”ステーキと卵”の続き


 部長のR・B・M・ロング中佐は気さくな職業士官で、親しみやすい風貌に似合わず、すばらしい頭脳と政治的かけひきにたけた手腕の持主であった。
 彼は沿岸監視組織に欠陥があることに気づき、一九三九年、ヨーロッパで大戦が勃発したのを機会に若干の予算を獲得して改善に着手した。
 ロングは海軍大学時代の級友エリック・フェルト少佐に仕事を任せたが,それは幸運な選択だった。
 フェルトは海軍の同僚とは必ずしも上手に付きあえなかったが、南太平洋に住む白人たち──頑固で個人主義的な”植民者”たちとはぴったり呼吸が合った
 一九二二年、平時の人員整理で海軍を去った彼はニューギニアに行き、ワウ金鉱山の支配人をやっている時に戦時任務へ呼び返されたのであった。