●「続・知られざる日豪関係」(573)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”ステーキと卵”の続き


 通信文を送るために、フェルトは<プレイフェア・コード>と呼ばれる簡単な暗号を各地の監視員たちに教えたが、それは必要なかぎ語(キー・ワード)を並べたリストのほかは何の設備もいらないものだった。
 それはとくに堅い暗号ではなかったが、報告が終れば分ってもかまわない程度で、捕虜になる危険もなかろう、と軽視されていたのである。
 こうした都合のよい想定は、真珠湾から押しよせる大波にもろくも崩れ去った。
 日本軍はあっという間にフェルト少佐の防壁に穴をあけ、一九四二年二月の終りまでにニューブリテン島、ニューアイルランド島および全ビスマーク諸島海域を征服した。