●「続・知られざる日豪関係」(579)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”ステーキと卵”の続き


 そこからは沿岸の平地とはるか沖合まで一望の下に見渡すことができた。
 クレメンズが東方を見張っているので、彼らは島の中央部を担任したわけである。
 さて三人目で白髪男のローズはガダルカナル島の西端部を引き受けることになったが、彼はシドニーの富裕な名家の出身で、第一次大戦で負傷し、二〇年代を苦難のうちに過したのち、結局一九三三年ソロモンのレバー農園に落ちついた。
 そこで少しずつ現地人労働者の集め方やワニの射殺法、ココナツの実のもっとも効果的な採取法などを学び、今やしぶとい皮肉屋できわめて個性的な島の住人に成長していた。
 ローズは一年以上も前からフェルトに監視哨の候補者として目をつけられていたが、配置する携帶無線機がなかったので、そのままになっていた。