●「続・知られざる日豪関係」(581)
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より
”ステーキと卵”の続き
アオラにある大きなパンヤンの樹頂に設けた見張所で、クレメンズは日本軍の上陸が始まるまで何日の余裕があるだろうかと考えこんでいた。
島にいた三人の監視員の中で、彼は敵の第一線からいちばん遠くに位置していたが、アオラは島の最重要地点だったから、日本軍はまずここを狙うのではないかとも思えた。
そこで彼は早目にステーションの背後の丘陵に退く準備をはじめた。
そうしている間にも、彼は行政官として、島にイギリス人がいるという事実を現住民に周知させておこうと努めた。
だが彼の日常生活は喜劇的な対照をなしていた。
ある時は戦闘の準備をやっていたかと思うと、今度は現住民の夫婦げんかの仲裁にかけつけるという風で、ともあれ彼の権威がすべてに及んでいるのを示すのは意義のあることだと思われた。