●「続・知られざる日豪関係」(588)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”ステーキと卵”の続き


 雑音がひどかったが、無線器に身をかがめるとかすかなしかし絶望的な声で、「ステーキと卵。ちくしょう。ステーキと卵。ちくしょう。VNTG局からVQJ-4局へ、ステーキと卵・・・・・」と呼びかけるのが聞きとれた。
 意味は分ったが、ただそれだけで静寂が戻った。
 声はとだえ、あとは空電が鳴りつづけるだけ。
 VNTGは日本の艦隊を発見したのだろうか。
 日本軍はもう上陸していて、ステーションになだれこんでいるのだろうか。
 オーストラリア空軍や海兵隊は無事引き揚げたのだろうか、恐怖と心配で、その夜アオラでは誰も眠れなかった。