●「続・知られざる日豪関係」(600)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”ステーキと卵”の続き


 この伍長は事務所の壁をゆるがすような大きな音をたてて入ってくるまじめな男で、偵察隊編成を命じられると部下の巡査の中から適任者をえらび、近隣の村から新人を集めて隊長におさまったが、すぐに彼らは勇敢で気のきくことが分った。
 ビンギチという現地人はカヌーでツラギへ定期的に出かけて行って、日本軍がそこで何をしているか最新の情報をもたらした。
 ただ彼らの意欲には問題がないとしても、見たものをいかに表現させるかを教えるのが大変だった。
 ピジン・イングリッシュ(南太平洋の現住民が使う英語と中国語を合成した簡単な言語 【注】:Pidgin English。貿易商など、外部から来た人間と現地人との意思疎通のため、自然に作られた混成言語のひとつ。パプアニューギニアソロモン諸島などで用いられている)しか話さず、近代戦に使われる単語はほとんど含まれていなかった。