●「続・知られざる日豪関係」(601)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”ステーキと卵”の続き


 文明人でもトラックを見たことがなかったとしたらどう表現できよう。
 巡洋艦駆逐艦の違いにしても、彼らがふつう軍艦のことを、クック船長の昔から man of war(軍艦)ですませているというのに、どうやってその違いを語れようか。
 困ったクレメンズはいろいろと試行錯誤しているうちに、奇妙ではあるがなんとか通じうる表現の組み合わせを発見した。
 たとえばビジンで、「ビールびんと同じぐらいの小さな大砲」は、三インチ口径砲だというぐあいである。
 それまでのところランジェビアが放った偵察員たちの情報では日本軍がガダルカナル島に上陸してくる気配はなかったが、クレメンズは用心深かった。