●「続・知られざる日豪関係」(602)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”ステーキと卵”の続き


 彼はアオラの背後の丘陵にあるパリパオという小さな集落に、あらかじめ退避所を準備しておいた。
 現住民の助手ダニエル・ビュールは、アオラの事務所を忙しく立ち回って荷造りをしたり、ファイルや記録を帳簿につけたりした。
 生まれつきの事務屋であるピュールは、書類・領収書のたぐいはどれものこらすきちんとしておきたいという願望から、せっせと積みあげるよりは燃やしてしまう事態が近づいているのだということが理解しにくかったらしい。
 五月一三日、思いがけなくジェイムズ・スリット修道士が到着したので、後退準備は一時中断された。
 彼は戦争中でも伝道の仕事は継続すべきだと考えてガダルカナルに留まったカトリック伝道者の一人であった。