●「続・知られざる日豪関係」(607)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”ステーキと卵”の続き


 問題が一つ残っていた。
 この地点からはツラギが見えないので見晴しのよい場所が必要になった。
 そして翌日クレメンズはぴったりの場所を見つけた。
 村のはずれにある高さ五〇フィートの大木である。
 幹に籐をまきつけて足場にし、頂上に六フィート四方の遮閉された台を設け、手すりをつけて完全にした。
 常時哨兵がここで見張りに立ち、食物やビンローの実(熱帯アジアではこれをキンマの葉に包んでかむ風習がある)【注:熱帯各地に原生し、かつ栽培されるつる性植物。葉はキンマ葉といわれ、特異な芳香があり、味はやや苦い。
産地によりその主成分は著しい相違があるが、薬用としては、葉もしくは種子を駆風剤、興奮剤、健胃薬、去痰薬として用いる】が欲しいときはバケツをおろし、古い双眼鏡で水平線を見てもし何か変わったものが見えたらほら貝を吹く手筈にした。