●「続・知られざる日豪関係」(621)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”ステーキと卵”の続き


 クレメンズの部下のドヴは人夫になって、海岸から滑走路用地まで物資を運んだが、運んだもののすべてについてメモをつけていた。
 何度目かの労役召集でピュールも出かけて、タイボで小さいスクーナーから積荷を下ろす仕事についた。
 彼が汗をふいていると、石本その人が突然現れた。
 日本の伝統的風習に従っておじぎをすると、彼はていねいに問いかけた。
「君には以前ツラギで会いましたねえ」
 ピュールは心臓がとびだすような気がした。
 たしかに彼は何度も石本をツラギで見かけていたので、イギリス軍との関係を推定されても仕方がなかった。