●「続・知られざる日豪関係」(627)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”ステーキと卵”の続き


 見たところエジンバラ城のように安全で、海岸の眺めは抜群だった。
 ここを次の拠点にしようとクレメンズは決心した。
 しかし全般の見通しは決して明るくなかった。
 諸集落に散財する現住民の忠誠心はゆらぎはじめていた。
 日本軍は背後にあたる島の南海岸に進出しようとしているようだったし、無電機のバッテリーは弱まっていた。
 手持ちの飲料水もひどく減ってきた。
 七月八日、彼はマライタ島の中継本部にこうした現況を打電し、「これ以上の活動は困難である。指示を乞う」と結んだ。