●「続・知られざる日豪関係」(628)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”ステーキと卵”の続き


 クレメンズは島を離れることを考えはじめた。
 南海岸にはボートを二隻隠してあり、そこまでなら行けるだろうと思われた。
 同じ日に彼はゴールドリッジに打電して、マクファランに撤退するつもりがあるかを尋ねている。
 情勢は緊急の度を加え、七月一四日の日記に疲れて元気を失ったクレメンズは次のように書いた。
「主よ、いつまでいるようになるのでしょう」
 一方、白髪のローズも事態の切迫を感じとっていた。
 石本が、「ヨーロッパ人を探すために」ヴィサレに来て、オーバン司教が何とか受け流してくれたものの、いつまでもこの老人が黙り通せるか不安だった。
 それにローズがこれま海岸と丘の隠れ家の間を往復するのに使っていた通路も気づかれずにはいないだろう。