●「続・知られざる日豪関係」(657)
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より
”ステーキと卵”の続き
八月六日の夕方、フレッチャーの空母サラトガ、エンタープライズ、ワスプは、ガダルカナル南方の援護位置につくため、護衛艦とともに船団から分離した。
残りの船団はそのまま北上した。
夕闇の中で一三隻の輸送船につめこまれた一万七〇〇〇人近い海兵隊員が海上での最後の夜をすごしていた。
輸送船アメリカン・リジョンの居住甲板ではジュークボックスが鳴りひびき、若い海兵隊員はムンムンする暑さに汗で体を光らせながら大げさな身振りでジルバを踊っていた。
旗艦のマコーレーでは、ケリー・ターナー提督がむっつりとしてイギリスの軍事評論家リデル・ハートが一九三九に書いた文章の一節を思いめぐらせていた。