●「続・知られざる日豪関係」(679)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 爆撃機を先頭に旋回して体勢を整えると、再び進路を南東にとり、まっすぐブーゲンビル島の方向へ向って飛び去った。
 そのころブーゲンビル島北部にある小さな山村アラビアの奥五マイルの地点では、もう一人の沿岸監視員ジャック・リードが無線機のダイヤルにかがみこんでいた。
 前日は一日中とても忙しかったが、たまたま時間が出来たので二日ぶりに波長調整にかかったのである。
 彼は実際いつも忙しかった。
 色は浅黒く、頑丈できびきびした三六歳のリードは、一二年間ニューギニアの地方政庁で働き、一九四一年一一月初めてブーゲンビル島にやってきた。
 彼はその時ソハノの地区副行政官として赴任したのであるが、島のことを勉強しはじめたのは戦争が身近に迫ってからだった。