●「続・知られざる日豪関係」(691)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”ステーキと卵”の続き


 そのころ東部ガダルカナルの山奥ではよりよい眺望を求めてクレメンズがブンガナに移動していた。
 八月八日の朝早く起きて見張所に登ったクレメンズは、壮大な光景を見ることができた。
 多数の艦船がいたるところに展開し、上陸用舟艇がせわしく岸との間を行きかい、その航跡は青いキャンバスの上に白い絵の具を刷毛で塗ったように見えた。
 双眼鏡を通して、二五隻まで数えることができた。
 クレメンズは昼の空襲も見物した。
 吹きあげる煙は空をみたし、あらゆる色彩の光が輝き、轟音がとどろいた。
 彼は興奮のあまり食事も忘れた。