●「続・知られざる日豪関係」(697)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”ステーキと卵”の続き


 ガダルカナル島の監視員たちは、戦争の運命がかくも突如として変化したことを幸いにも気づかなかった。
 八月九日の明け方、マクファランはヨナパウ山に置いた見張地点から、火炎や砲撃の閃光やサーチライトの光芒を見た。
 それは明らかに海戦と推定されたが、その成り行きを知る手がかりはなかった。
 ブンガナにいたクレメンズも砲火が乱舞するのを眺めたが、やはり結果を知るすべを持たなかった。
「サボ島沖で海戦が起こったらしい」と彼は翌日の日記に簡潔に記した。
 白髪のローズは気づかなかったも同様で、島の反対側の洞窟で遠い砲声を時々聞いただけに終った。