●「続・知られざる日豪関係」(701)
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より
”ステーキと卵”の続き
ボロナヴァの東方にある海兵隊前哨線の哨兵はクレメンズの一行を見ると銃をかまえたが、発砲はしなかった。
八月一五日の朝、海岸伝いにアメリカ軍の前線へ行進してきた小さな一団は、これまでに見たいかなる部隊とも似ていなかった。
二列に並んだ裸に近い現住民たちがぴったりとよりそい、ライフル銃をかついで、いとも整然と歩いてきた。
小さな犬をつれて先頭に立つ白人は、ボロボロのシャツとズボンを身につけていたが、ピカピカに光った黒い礼装用のオックスフォード靴をはいていた。
マーティン・クレメンズの一行はアメリカ軍の境界線内へ入りつつあった。
ブンガナからここまで降りて来るのに二日を要した。