●「続・知られざる日豪関係」(703)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”ステーキと卵”の続き


 そこでクレメンズは隊列の間をつめてきちんと列を作らせ、自分はオックスフォード靴に足をむりやり押しこんだ。
 それはマクファランが少し前に送ってくれたもので小さすぎてひどく足が痛んだが、全体の効果に寄与するなら、いかなる犠牲も大きすぎるということはない。
 戦術は成功した。
 哨兵はしばらく構えていた銃を下ろし、入れ、と合図した。
 クレメンズは進み出たが、突然何か奇妙なかたまりがのどにつかえたようで、舌がこわばって誰かに話しかけるのがためらわれた。
 ここへ着く前には何を言うべきか練習していたのに、いざとなると一言も出てこない。