●「続・知られざる日豪関係」(705)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”ステーキと卵”の続き


 その日の夕方、彼はチャールズ・ウイディと感傷的な再会をとげ、日本酒一本とブランディの小びん二本を並べ、夜を徹して話しこんだが、あまり興奮しすぎたためか、いっこうに酔えなかった。
 二人の声は段々大きくなり、とうとう夜明けの三時にうんざりした海兵隊員がどなりこんでお開きになった。
 そのあとで幻滅がやってきた。
 やっと寝床に入った時、クレメンズは不意に空虚さと失望感が波のように押し寄せるのを感じた。
 彼は何カ月もこの日を待ち望み、困苦の中で一杯のビール、熱い風呂、柔らかいベッドを頭の中に思い描いていた。
だがここにはこうした快楽は何一つなく、ココナツ林の中のタコツボ壕をウイディと共有しているだけなのだ。