●「続・知られざる日豪関係」(724)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”ステーキと卵”の続き


 ブーゲンビル島の南端に近いマラビタ丘の見張所から、ポール・メイスンはショートランドの日本海軍泊地の全容を見下ろすことができたが、八月二九日彼は異常な動きを確認して、「五隻の軍艦 ── 巡洋艦か大型駆逐艦が一二四五突然南東に向って全速で出航した」と通報した。
 今までもメイスンはこうした動きがあればこまめに報告を送り、ヘンダーソン飛行場のパイロットは過労を押しての迎撃に忙しかった。
 抜け目のない用兵家である田中は、暗くなるまで艦隊を爆撃機の行動圏外にとどめ、それから全速で走って部隊を上陸させ、日の出までに行動圏外に出て帰途につくという巧妙な対策を考案した。
 そのころジャック・リードも多忙な日々を送っていた。