●「続・知られざる日豪関係」(729)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”ステーキと卵”の続き


 ゼロ戦との戦闘を引き受けたグラマン・ワイルドキャット戦闘機は優秀な迎撃機であったが、上昇力が不足し、より速くより機敏なゼロ戦の機先を制するに必要な高度である三万〜三万五〇〇〇フィートに達するには四五分を要した。
 待つほどもない。
 スロットの上をまっすぐに日本機の編隊がやってくる。
 爆撃機はいつも広く浅いV字型編隊を組み、ゼロ戦がその上下によりそっている。
 攻撃の瞬間を選ぶのは隊長の判断だが、合図とともに戦闘機は敵編隊の上に急降下し、ゼロ戦の直衛網を突き抜けて爆撃機に食いついくのである。
 空戦の様相はさまざまだったが、ある面ではいつも同じだった。