●「続・知られざる日豪関係」(734)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”よき羊飼い”


 すべては八月一五日に始まった。
 その日ガダルカナルの西端で働いていた白髪のローズは、現住民からアメリカ人飛行士がチアロ湾の近くにゴムボートで上陸した話を聞いた。
 思慮深いローズはリーフ・シュレーダーに四五口径拳銃を持たせ調査に行かせた。
 シュレーダーはその飛行士を浜から五〇ヤードの地点で見つけたが、服はズタズタだし、ひどく日焼けしていたので、すぐにはアメリカ人か日本人か分らなかった。
 漂着した男も同様にシュレーダーを疑わしく思ったのか、しばらくの間二人はお互いを試すように向い合っていた。
 ついに飛行士の方が意を決してシュレーダーに歩み寄り、自分はアメリカ人だと名乗った。