●「続・知られざる日豪関係」(736)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”よき羊飼い”


 身分がはっきりしたのでシュレーダーはウォーデンを洞窟に連れ帰った。
 そこで飛行士はやや不機嫌な表情のローズに挨拶された。
 たいていの監視員は一人で働くことを好むもので、同居人は少なければ少ないほどよい。
 ローズも例外ではなかった。
 ウォーデンが洞窟へ来る途中岩につまずき、腕をひどくくじいたのも悪かった。
 怪我人ならますます重荷になるのだ。
 幸運にも近くに手当てのできるあてがあった。
 海岸の方へ一〇マイルばかり下ったタンガラレのカトリック伝道所を委されていたエメリー・ド・クラーク神父は熟練した医師だったので、ローズは彼に手紙を書き、洞窟に来てウォーデンの傷を見てくれないか、と頼んだ。