●「続・知られざる日豪関係」(738)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”よき羊飼い”


 巡回しながら一日に一五〇人の告解を聴くこともざらだった。
 また地区にある一〇ヵ所のミッション・スクールの校長として、彼は地域での唯一の教育機関を統轄した。
 医師として彼は二〇〇〇人近い患者相手に“開業”していた。
 クラーク神父のお得意は熱帯潰瘍への注射で、年間二万一〇〇〇本の注射記録を残したほどのベテランだった。
 彼が現住民の間で多大の信頼を受けたのは当然だろう。
 なぜなら彼はいかなる害も与えず医療で奉仕したのだから。
 神父の最大の強みは、彼が現住民と完全に融けあっている点にあった。
 彼は島の部族を支配していた。
 女家長制度をよく理解し尊敬した。