●「続・知られざる日豪関係」(740)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”よき羊飼い”


 両方とも「白人」で、日本人についてはただ「新白人(ニュー・ホワイト)と呼んだ。
 クラーク神父にしても国家意識はあまりなかった。
 あえて言えば彼は連合国側ではなく,現住民側であった。
 実際問題として神父は単純に彼が養っている羊の群れにとって最善を望むだけのことだった。 
 古い植民地制度には欠点はあるが,マレーやフィリピンでの行状から判断して日本が持ちこもうとしているものよりはましだと思われた。
 そこで彼は自己流を通し,自分の羊の群れにもっともよいかどうかだけを考えて,政府の方針にそったものかどうかに,あまりこだわらなかった。