●「続・知られざる日豪関係」(741)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”よき羊飼い”


 ソロモン群島における教会の統括者で老ベルギー人のオーバン司教は伝道者たちに”中立”をすすめ、日本軍に対してその旨を誓言するようにと言っていたが、クラーク神父はこの勧告を受けつけなかった。
 なぜなら日本軍は“群れ”にとって有害であり、その意味で中立は悪という結論になるのだ。
 だからといって彼が常に連合国側のいうなりになったわけでもない。
 群島行政長官が全住民に対して奥地に待避するよう命じた時、クラークはこれは“群れ”にとって酷にすぎる処置だと考えた。
 彼らは海辺の民であって、森の中では飢えるほかあるまいと思われた。