●「続・知られざる日豪関係」(747)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”よき羊飼い”


 嘘とごまかしの夕べだった。
 しかしクラーク神父は大して苦にしなかった。
 日本軍は去って行き、伝道所は無事で、羊飼いは群れを守ったのだ。
 次の試練は八月七日のアメリカ軍上陸から数日後にやってきた。
 この時点まで神父はローズに情報を与え、タンガラレを守るだけにとどめていたが、その日から彼は一歩も二歩も踏み出した。
 一〇日に彼は敷地の背後に緊急着陸用地を切り開いた。
 一六日になってローズからウォーデンの傷を見に来てくれるよう頼んだ手紙を受け取った時、彼はウォーデンを連れて来てタンガラレに隠そうと決心した。