●「続・知られざる日豪関係」(748)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”よき羊飼い”


 それはきわめて大胆な行為だったが、彼はそれによって立場を割り切ったのである。
 よき羊飼いは、時には群れを見守る以上のことをしなければならない。
 囲いに入ってくる狼は打たなくてはならないというのだった。
 このような経過で今彼はローズの洞窟に座って、ビル・ウォーデンへ一緒にタンガラレへ来るようにすすめていた。
 腕の手当てもしやすいし、友軍機が通りかかって救助してくれるチャンスも多い、日本軍につかまる危険も少ないと。
 だがウォーデンはためらっていた。
 ローズは無線機を持っていて、オーストラリア海軍の一員だし、連合軍前哨基地の運営者でもある。