●「続・知られざる日豪関係」(749)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”よき羊飼い”


 一方この小柄でせわしなさそうな伝道者は、公的な地位というものは全くないのだ。
 彼と一緒に出て行くのは奇異に感じられたが、クラーク神父は偉大な説得者で、結局ウォーデンも同行するのに同意した。
 彼らは苦労して長い道のりを歩き、カヌーに乗って、夜八時にタンガラレへ着いた。
 ウォーデンはまだ熱があり気も滅入っていたが、シャワーを浴び、微笑みながらも沈黙を守る修道女たちが用意してくれた夕食をとると元気を回復した。
 クラーク神父はウォーデンの腕に包帯をしてくれ、嬉しいことに歯ブラシとチューブ入りの歯みがきを用意してくれた。
 その後の日々は墜落したパイロットにとって天国だった。