●「続・知られざる日豪関係」(750)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”よき羊飼い”


 毎朝神父は彼の担当区域を巡回に出かけ、ウォーデンはのんびりと時を過した。
 海辺をぶらつき、現住民の子供とたわむれ、ベランダのデッキチェアにくつろいで本棚から抜き出した本を読むというぐあいである。
 ここの蔵書の中ではP・Gウッドハウスの作品が気に入った。
 食事も豊富で、傷ついた腕はめきめきと回復した。
 ときどき米軍機が頭上を通りすぎたが、彼の合図を発見するにはいつも高度が高すぎた。
 しかしウォーデンは大してそれを気にせずにすんだ。
 だが八月二八日、ヴィサレの伝道者たちが訪れ、島の北部の状況について胸のつまるような話をもたらして、この休息も終った。