●「続・知られざる日豪関係」(757)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”よき羊飼い”


「いいんです」とウォーデンは答えた。
「今日はぼくが二四歳になった誕生日なのですから」
 すっかり心を和らげた神父は、自分のコンビーフと最後のパンの皮も渡してやった。
 ビル・ウォーデンが恩人に対して、実はその日は誕生日ではなかったと告白したのはそれから二三年後のことだった。
 そのあとはもう何も食物がなく、夕方になって空腹をかかえていると、一人の老婆が豚の頭をもってジャングルから駆け出して来た。
 彼はそれを人夫たちにやったが、その一部が二人にもまわってきた。
 ウォーデンはもっと上等の食物を期待していたのだが、今夜のところはそれで満足した。