●「続・知られざる日豪関係」(758)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”よき羊飼い”


 翌一一日の夕方、彼らはやっと島の中心部にある、人口二〇〇人ばかりのナラという大きな集落に到着した。
 ここには住民の同情さえ得られれば食料も休息もたっぷりあった。
 だが、それを得るのは決して容易ではない。
 奥地深く住む現住民にとって、戦争はつねに不可解なものである。
 それは白人が二手に分れて戦っていることにほかならず、その上略奪に来た一六人の日本軍偵察隊を皆殺しにしたばかりのナラ住民は、一層用心深くなっていたのである。
 新米の訪問者がこの皆殺しにどう反応するか気にかけていた酋長のウィキは、慎重に事件について語り、地区行政官が集落を罰するだろうかと尋ねた。