●「続・知られざる日豪関係」(775)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”よき羊飼い”


 クラーク神父はこんなやりとりをつづけているひまはなかった。
 そこで彼は説明した。
 本当は行くつもりはない、決して。
 しかしそれは秘密にしておかなくてはならない。
 そうすればだれもこの計画をひっくり返せないからだ。
 夕方遅く隠れ場所へこっそり行って、船がみんなをつれていく時に一人だけ残るつもりだと。
 そこで彼らも安心して四人の偵察員を差し出すことを約束して、代表団は静かに引きあげていった。
 この決意をローズに話すと、彼は黙って三〇三口径ライフル銃と弾薬をくれた。