●「続・知られざる日豪関係」(776)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”よき羊飼い”


 次は修道女たちだが、それは涙の別れになった。
 何しろレオネ修道女は一九〇五年以来タンガラレで働いていたのだ。
 最後にブルグマンス神父にさよならを言い、午後一〇時彼は闇の中に姿を消す。
 机の上には司教にあてた短い手紙が残されていた。


 船が来たらわたしを待たないで下さい。わたしは是非にと求められているのです。あなたのもとへ帰るのは無理になるかも知れません。しかし御心配はいりません。さようなら、わたしを祝福して下さるように。

                                                 神父エメリー


 一〇月四日の朝、ラマダ号が到着し、岸に近づくと、ディック・ホートンは双眼鏡で浜辺を注意深く観察した。