●「続・知られざる日豪関係」(777)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”よき羊飼い”


 興奮した人々が押しよせ走りよってくる様子を一目見て、日本軍が周辺にはいないことが分った。
 ラマダ号はゆっくりと浜辺に近より、錨をおろした。
 そしてホートンは乗客たちに挨拶するため上陸した。
 タンガラレの背後半マイルのツプナ丘では、クラーク神父が船が去るのを確かめるまで待っていた。
 八時、船は無事に岸を離れた。
 輝く朝日を浴びつつ彼は誇らしげにライフル銃をかついだ四人の偵察員とともに、伝道所へ引き返した。
 着くと大歓声が起こり、現住民たちは彼のまわりに群がった。
 少年が一人小さな伝道所の塔にかけのぼって、鐘をならしはじめた。
 羊飼いは羊たちの住家に帰ったのである。