●「続・知られざる日豪関係」(778)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”新しい目と耳”


 ラマダ号が伝道者救出にタンガラレへ向っている頃、そこから一二〇〇マイル離れたオーストラリアのブリスベーンでは、きわめて野心的な遠征計画が進行しつつあった。
 一〇月六日、ニューファームズ埠頭に投錨したアメリカ潜水艦グランパス号の乗員たちは、奇妙な貨物が積み込まれるのに好奇心をそそられた。
 それは軍用糧食の箱、折りたたみ椅子、ゴムボート四隻、折りたたみ式カヌー二隻、ウイスキー少々、防水キャンバス地でていねいに包んだ多数の無線器材などであった。
 さらに奇妙なことに、その夜四人の見なれぬ陽気な男たちが乗船して来たが、彼らはアメリカ軍の水兵服を着ているのに本場の英語を話し、オーストラリアなまりがあった。