●「続・知られざる日豪関係」(785)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”新しい目と耳”


 もしカクタス空軍(ガダルカナル所在の米海兵隊航空隊の略号名)が敵に痛打を与えようとするなら、迅速で正確な情報が不可欠だった。
 マッケンジーは、彼の監視網に新しい目と耳が必要だと考えはじめた。
 メイスンとケネディの間に横たわる一五〇マイルの空所をを埋めるために、ベララベラとチョイセル両島に新しい監視員を配置せねばならない。
 この二つの島はブーゲンビルの南側にあり、スロットのはじまる場所でもある。
 それには、募集、補給、通信、輸送といっためんどうな問題があったが、幸運にも一人の重要人物による援助が得られた。
 八月三〇日、パームビーチ・スーツとパナマ帽を身につけた優雅な紳士が、折から非常用補給の積荷を運んで来た駆逐艦カルフーン号から下船して浜辺をブラブラと歩いて来た。